第5回 安心して食べられる米を提供したい。
米農家 中垰 二郎さん
自然豊かな下関市豊田町で、山の湧水と有機肥料にこだわって育て上げた米「地獄のコシヒカリ」。安心して食べられるおいしい米作りに魅了されたのは父親の米づくりを手伝ったことがきっかけだった。
米作り歴は約8年。現状に満足することなく、よりおいしい米を作ろうとする父親の姿に魅了され、脱サラをして米農家に転身した。試行錯誤をしながら米作りに取り組むかたわら、宇部商工会議所が主催する「起業塾」にも通い、経営やマーケティングなどの基礎を学んだ。同会議のビジネスプランコンテストでは「米」をテーマにした事業計画で優秀賞に選ばれるなど、力を付けていった。
肝心の米作りは、独自性のある品質に仕上げることを目指して試行を重ねた。年ごとに肥料や農薬の量を変えながら生産し、味わいの違いを比較した。そして現在、農薬を全く使わないおいしい米作りを研究中。「おいしい」と喜んでもらえる理想の米が完成しつつあると喜んだ。
だが、これまでの道のりは平坦ではなかった。こだわり抜いて生産した自慢の米だが、消費者にとっては「山口県産米」のひとつに過ぎなかった。売れ行きが伸びない悩みに加え、製法にこだわるが故に手間が増えて収穫量が激減した。すべてが思うように進まず、ふと「地獄のようだ」と感じた。この時の感情が奇抜なネーミングにつなかった。
フェイスブックなどのSNSを利用して情報を発信すると、一風変わったネーミングのおかげもあって徐々に認知されるようになり、テレビやラジオなどでも紹介された。最近では、結婚や出産など、贈答向けのオリジナル商品にも力を入れている。
自身のモットーは"自分がいいと思うように楽しんでやること"。米本来の味を追求し、子どもからお年寄りまでが安心して口にできるおいしい米作りを楽しみながら実践している。
(サンデーうべ 2018年3月9日号掲載)