第11回 被写体を「どう撮るか」ではなく「どう見るか」
カメラマン 諸永 恒夫さん
フリーカメラマンになって25年が過ぎたある日、デビュー当時から撮影を担当していた国民的アイドルグループSMAPの解散を知った。撮影を任されたのはカメラマンとしてのスタートを切った時期でもあった。それぞれの25年を振り返り、自身のライフスタイルに一区切りつけようと決意。活動の拠点を東京から地元宇部に移した。
小学生の頃に父親から譲り受けたカメラに衝撃を受け、写真を撮ることにのめり込んだ。カメラマンになる夢を実現するために、高校卒業後に上京。専門学校で写真を学びながら、尊敬する写真家・河合肇さんのアシスタントを5年間務めた。その後独立した。
夢見ていたカメラマンとしての活動は甘くなかった。思うように仕事が入ってこない時期が続いた。自身を売り込んで獲得できそうだった出版社の仕事を、ダブルブッキングでキャンセルして2度とオファーが来なくなったこともあった。この経験はワークスタイルに影響を与えた。手を広げ過ぎずに目の前のことに全力を注ぎ、一緒に仕事をしたいと思われる働き方をしようと誓った。
徐々に実績を重ね、女性アイドルなどが表紙や巻頭を飾る「明星ヘアカタログ」の撮影を任されたこともある。回を重ねるごとに担当するページも増え、業界関係者との人脈も広がった。
自身のライフワークとして宇部の町をスナップ写真に収めている
ある時、カメラマン仲間のピンチヒッターを務める機会があり、その撮影をきっかけに編集社にも気に行ってもらえて継続的にオファーが届くようになった。その時に撮影したのがSMAPだった。
その後は雑誌の表紙や巻頭ページ、写真集などで女優、アイドル、タレント、ハリウッド俳優などの撮影を手掛けてきた。
カメラマンという職業の魅力について諸永さんは、「いろんな人との出会いやコミュニケーションが取れること」だと話す。写真は「どう撮るか」を考えるといつかネタ切れになってしまうため、被写体を「どう見るか」をしっかり判断して撮ることだという。
その思いはUターンした今も変わらない。今後は宇部を拠点に置き、全国各地で幅広く写真を撮っていきたいと明るい笑顔を見せた。
◆家族写真や個人的なポートレイトおよびホームページなどの撮影依頼も受け付け中。 相談にも気軽に対応する。問い合わせは諸永さん(090-4702-0449)へ。
(サンデーうべ 2018年9月14日号掲載)