第22回 デザインで世界を変える
デザイナー 益田 文和さん
県内を中心に、自然資源を活用した循環型のものづくりと新しい社会提案を行うデザイナー。
東京都出身の益田さんは、大学で工業デザインを専攻したのち、建設会社、デザインオフィスを経て独立。工業製品をデザインするインダストリアルデザイナーとして、国内の大手自動車メーカー、家電メーカー、家具メーカーの開発に第一線で関わってきた。
しかしある時、京都嵐山の河原で自身が数年前にデザインした洗濯機が粗大ゴミとして捨てられているのを発見。その製品が何万台も生産、販売、破棄されることで、地中から掘り出される資源を自分たちデザイナーが無自覚的に消費し、それが地球に悪影響を及ぼすことに危機感を抱くようになった。1980年代の終わり頃、同じ疑問を持って活動を開始していたヨーロッパのデザイナーたちと連絡を取り合い、議論を繰り返しアドバイスを出し合い、自分たちに何ができ、すべきかを今日まで考え続けた。
宇部への移住を決意したのは7年前。東日本大震災のボランティアをしながらもこれまでと同じように大手企業の仕事をしていることに矛盾を感じ、楠に移住。インフラを切断したその場所では、同じ考えを持つ学生や若者と一緒に可能な限りの自給自足を行いながら、最新技術を活用した実験的な生活を送っている。
現在は、豊富な竹林を持つ山口県の竹を使った自転車の開発や、東日本大震災で被災した宮城県の黄金山神社で販売するお土産づくり、廃校問題、市の100周年記念事業プロジェクトなどに関わっている。
キーワードは循環。石油やプラスチックなどの資源を輸入して作り出すのではなく、自然循環の中でのものづくりにこだわる。黄金山神社で売るお土産は、春に鹿が落とした角を拾い集め、指輪やネックレスなどのアクセサリーとして販売している。国内に6000はあるといわれる廃校問題については、廃校を活かしたイベントを企画し、市の100周年記念事業ではレジ袋廃止などに取り組む。
「環境破壊をせずに持続できる“サステナブル”な文明、社会をデザインし、実現するためには考え方や生き方を変える必要がある。ライフスタイルの変更と、素材や技術を地下資源依存型から自然循環型資源の活用へと変更することは一体です」と益田さん。「僕らがやっていることを、変なことしているなと思いながら、でもそうかもしれないと思ってくれる人が一人でも増えれば環境も変わっていく。僕たちはそれをデザインを通して提案しています」。今後はこの動きを全国に広げていきたいと柔和な笑顔で抱負を語ってくれた。
問い合わせ
株式会社オープンハウス
宇部市今富25−1
050-3805-1485
(サンデーワイド 2020年2月28日号掲載)