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この街この人

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第6回 「おいしかったよ」の笑顔が洋菓子作りの原動力

パティシエ 坂田 龍太さん



 和菓子屋として誕生した「虎月堂」は1990年に洋菓子屋へと転向し、創業から65年の節目を迎えた。現在は三代目の坂田龍太さんが、父淳一さんと共に厨房に立ち、素材を生かした菓子作りに励んでいる。
 家業を継ぐために修業に入ったのは長崎県佐世保の有名洋菓子店。大学卒業後の入店だったため、先輩社員は年下の女性が多かった。早く先輩に追い付きたい、負けたくない思いが芽生え、入社2年目からは早朝5時から深夜2時過ぎまで働き、2〜3時間睡眠を取って翌朝出勤をするという生活を繰り返した。常に周りと自分を比較し、気持ちだけが先走る毎日。そんな中ではっとさせられた上司の一言は今でも成長の糧になっている。「横を見て走るな、前を見て走れ」。自分だけにしかできない何かを見つけることを教わった。

 5年間の修業を経て、虎月堂の3代目パティシエとなった。「素材をもっと素材らしく」を社訓とし、素材本来の味の追求に注力。手間を惜しまず、どこの店とも違うオリジナリティーのある味を目指して商品開発に取り組んでいる。父淳一さんからは、自由に商品作りを任されており、それぞれの個性が共存した幅広い商品展開を行っている。
 現在、店舗に並ぶ商品の多くは三代目が考案した洋菓子。フランス産の岩塩を使ったビターショコラと塩キャラメルのタルトやシシリー産のピスタチオをふんだんに使用したモンブランピスターシュ、市内ではあまり見かけない「サバラン」など、ほかでは味わえないオリジナル商品が並ぶ。

 手土産におすすめの「虎月堂フロマージュ」は初めて親子で共作した品。淳一さんが考案したベークドチーズの上に、坂田さんこだわりのさっぱりとしたフロマージュを重ねた。1+1が2以上の味になるよう、二人三脚で試行を重ねて生み出した。発送可能な冷凍商品のため、県外への贈り物としても喜ばれる人気商品となった。
 2年前にオープンした南浜町の2号店は、市西部や山陽小野田市からもアクセスしやすく好評。今後は、酒とスイーツを提供できるカフェバーのオープンも考えている。
 パティシエという職業について坂田さんは「お菓子を通して自分を表現し、認めてもらえる手段」と話す。「おいしい」と喜ぶ笑顔を思い浮かべながら手間暇かけて、心のこもったケーキを作り続けていく。


(サンデーうべ 2018年4月13日号掲載)