第16回 街のシンボルになるようなアートを描きたい
デザインペインター 木村 和紀さん
建物などの壁にスプレーやペンキでダイナミックに描かれるグラフィティアート。近年ではその芸術的価値が注目され、現代アートのひとつとして認識されている。
店舗の外壁や扉などに、天使の羽や人物、キャラクターなどを繊細な色使いで描いていくのは北九州市出身の木村和紀さん。19歳の時に雑誌で見たアメリカのブラックカルチャーに衝撃を受け音楽、ダンス、映画、グラフィティアートなど日本にはない文化にエネルギーを感じたという。この素晴らしい文化を仕事にしたいという強い思いから、アートで表現できるデザインペインターの道を決意した。
技術はすべて独学。実践的な経験を積みながらデザイナーとしての価値を高めていった。空気が噴き出る力で絵の具を霧状に吹き付ける、エアブラシを使った「スプレーアート」という技法で、福岡市内の飲食店やクラブ、トラックのボディやシャッター、ビーチの看板などを数多く手掛けてきた。2011年には天神に店を構えるまでになった。
さらなるアートの幅を広げるため、ロゴやキャラクター、ポスター、チラシなどを制作するグラフィックアートの技能も習得。Tシャツやブーツ、ヘルメットにデザインを施すサービスも開始した。
結婚を機に宇部へ移住。2016年に「HAGANE PAINT(ハガネペイント)」を設立し、市内の飲食店やバーの壁面や看板など、さまざまなアートワークを手掛けている。目を引くような繊細な色使いと柔らかいタッチは評判が高く、市内のあちこちで作品を目にすることができる。
「時代の転換期に、壁面デザインという文化を少しずつ認めてもらえるようになった。今後の目標は、この街のシンボルになるアートを描くこと。そのためには日々挑戦の連続です」と抱負を語った。